テレワークは、Webツールだとか、セキュリティだとかインフラ面への説明が多くあります。
しかし、経営者視点で見ると、仕事場所がオフィスから自宅に変化したことで、労働環境の課題としてとらえる必要があります。
これについて、考えてみましょう。
テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン
厚生労働省から『テレワークにおける敵s綱労務管理のためのガイドライン』というのが出ています。
『テレワークにおける敵s綱労務管理のためのガイドライン』(厚生労働省、PDFファイル)
この『はじめに』は、
時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であることから、子育て、介護と仕事の両立手段となるとともに、ワーク・ライフ・バランスに資することができ、多様な人材の能力発揮が可能
『テレワークにおける敵s綱労務管理のためのガイドライン』(厚生労働省、PDFファイル)
と書かれているのですが、一方で、
課題等として、企業側からは「労働時間の管理が難しい」等が、労働者側からは「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」、「長時間労働になりやすい」等の点がそれぞれ挙げられています。
『テレワークにおける敵s綱労務管理のためのガイドライン』(厚生労働省、PDFファイル)
幅広い働き方が可能になるのは、さまざまな人材を活用できるということで、メリットとして大きいのですが、目の前にいなからこそ起きる労務管理の課題が出てきます。
コロナ禍によって、急いでテレワークを実施したことで、そこまで気が回っていないかもしれませんが、このガイドラインには目を通して、徐々に、しっかりとした体制を整えておきましょう。
半年後、1年後に、労務管理ができていなかったことで、事故が起きると、経営者の責任が問われますからね。
まずは、この記事を参考にしてみてください。
なお、ここに記載された内容は、個人的な見解であって、適法かどうかといったことについては、社労士等の専門家や労働基準監督局にご相談ください。
労働基準関係法令の適用及び留意点等
いくら自宅で仕事をしているといっても、雇用関係にあるのですから、労働基準関係法令が適応されます。
例えば、
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)
- 最低賃金法(昭和34年法律第137号)
- 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)
- 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)
などがあります。
法律を細かく読んでも、よく分からないー!ってことになるので(笑)その辺は専門家に任せます。
ただ、これらの法律は、ざっくりと、労働場所の管理と、労働時間の管理、労働者の健康管理に分けられます。
まあ、場所の管理と、時間の管理ができていないと、健康問題になってくるので、これらは、お互いに深く関係していますよね。
労働場所の管理について
テレワークの労働環境を整えるというのは、非常に難しい課題です。
それぞれの社員の家の広さや間取り、家族構成、周囲の環境など、どれ一つとっても同じにはなりません。
しかも、テレワークでは、パソコンを使って仕事をすることがメインなので、『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン』と同程度になることが望ましいと、厚労省はアドバイスしています。
例えば、『設備の占める容積を除き、10㎥以上の空間』と書かれても、全社員が、そんな部屋を用意できるかどうか分からないですよね。
『机上は照度300ルクス以上とする』、『ディスプレイは照度500ルクス以下』とか書いてありますが、そもそも、照度計測器なんて、持ってないですよね!
ただ、こういう環境が理想なので、少しでも工夫してくださいというガイドラインを会社としては提示しておきましょう。
知らないままで、窮屈な姿勢を続けていると、体調を崩したり、あるいは、ケーブルを引っ掛けたり、飲み物をこぼして、パソコンを壊してしまうということだってあるからです。
そうなれば、効率が悪いだけでなく、場合のよっては、大きな損失になることもあります。
労働時間の管理について
労働時間の管理は、勘違いしている経営者や管理職の人が多くいます。
パソコンに向かっている時間を記録するためのツールを入れたり、パソコンについているカメラに顔が映っていないと、業務についてないと判断するなどという行き過ぎなことをやってるところもあります。
これは、時間管理ではなく、『監視』です。
時間管理は、監視するのが目的ではなく、敵席な労働時間になっているのかを知ることが、第一です。
テレワークでは、見えないが故に、サボっているよりも、頑張りすぎてしまうのが見えないことが危険です。
例えば、午後6時ぐらいに、お客さんから連絡が入り、明日までに、資料の修正を依頼されたときに、そこから作業するといったことが続いていても、なかなか上司は分かりません。
昼休みなどの休憩時間もしっかり取れているのかも、健康面での課題になってくるので重要です。
また、在宅でできるが故に、土日も、気になっている仕事があれば、ついつい、パソコンを開いて、メールをチェックしたり、資料を開いて修正するといったこともあります。
同じ職場にいれば、ふと、気になって、声を掛けるとかできるのですが、在宅だと、それが見えてこないのです。
逆に、在宅だからこそ起きがちな時間管理のトラブルとしては、小さなお子さんがいる家庭などは、子供が急に発熱するなどで、急遽、病院へ行くといったことがあります。
そういう場合の私用で離れることを想定して、どのように連絡するのか、どのように勤務時間を扱うのかを規定しておかないと、給与にも関わってくるので、社員全員が理解できるルール作りと、周知徹底が必要です。
また、勤務時間の始まりと終わりを明確にしておかないと、パソコンを持って移動しようとして、転んで怪我をしたときに、労災なのか、そうでないのかなどが曖昧になってしまいます。
在宅であっても、勤務時間での怪我などは、労災に当てはまるので、その辺の区別を明確にしておく必要があります。
また、出張や客先へ訪問するときも、自宅からの移動になるので、どこから勤務時間にするのかも明確にしておく必要があります(移動中に、ノートパソコンで仕事をする場合、指揮命令下にあれば、勤務時間となるので、この辺の細かい取り決めは必要です)。
健康管理について
テレワークでは、職場で仕事をしている以上に、メンタルな面での健康管理が重要になってきます。
どうしても、1人で孤独に作業しているという気持ちになることがあるので、精神的に沈み込んでしまって、ウツになることがあります。
職場であれば、昼食時に無駄話をしたり、給湯室やトイレ、喫煙所など、さまざまな場所で、たわいもない話をすることができます。
しかし、テレワークとなると、そういう時間が取れず、かといって、無駄話をするために、Web会議ツールを使うというのもなかなかできないです。
また、家にいることで、これまで、あまり気にしていなかった子供のことや、ペットのことが気になるようになるなど、新たな心理的な負担が増えることもあります。
経営者や管理者は、これまで以上に社員とコミュニケーションをとり、時には、仕事とは関係ない話をする機会を作るなど、Web会議を効果的に使うことが必要です。
だけどテレワークへの波は止めることはできない
他のところで紹介されているのとは、ちょっと違う視点でのテレワークの注意点をお伝えしました。
『なんか、面倒だなぁ・・・』
って、思った経営者もいるのではないでしょうか?
しかし、労働環境、労働時間、健康管理は、在宅でなくとも考えないといけないこと。
そして、コロナ禍の影響で、急激に進んでいるテレワークの波は止めることができません。
政府も、テレワークを後押しする政策に舵を切っていますし、さまざまなビジネスがオンライン化し、テレワークが当たり前になりつつあります。
今後、学校教育もオンライン化することで、それが当たり前の子供たちが社会人になるのは、すぐです。
だからこそ、テレワークへ、その場しのぎで対応するのではなく、しっかりと地に足のついたテレワークへの改革が求められているのです。