『仮想空間シフト』を読んでみた

誰もが「知の高速道路」に乗れる時代というサブタイトルが書かれている『仮想空間シフト』を読みました。

インドネシア・バリ島に住みながら経済産業省などの仕事にも関わる藤原和啓さんと、独立研究者であり著作家である山口周さんとの対談本です。

この本の『仮想空間』というのは、広い意味での仮想空間が含まれていて、『リモート』とか『テレ〇〇』といったものも全てひっくるめて『仮想空間』と言っています。

そこまで広げれば、そりゃ、物流と通信が発達してきてるので、コロナがどうのこうのというよりも、すべてが『仮想空間』へシフトすると言えますけどね(^^;

ただ、そこはそことして、この本での分析は、『仮想空間シフト』が加速していて、大きくは、デジタル環境の変化が速く、そのために世代間ギャップが大きいことを指摘しています。

Z世代と呼ばれる20代にとっては、生まれた時からスマホに接して、ネットにつながっているのが当たり前。SNSで友達を作るのも当然のことだし、オンラインだとか、オフラインだとか、そんな区別などしていません。

オジサン・オバサン世代は、日程の打ち合わせは、メールやSNSを使ったとしても、最終的には、「では、一度、お会いして詳細を・・・」みたいなことになってしまいますw

ただ、このコロナ禍では、そうも言ってられず、無理やりに『仮想空間シフト』が起きました。

その結果、打ち合わせのスタイルも変化してきて、言葉だけでは、伝わりにくいので、レジュメを用意する、事前に資料をオンラインで読めるようにしておくといったことになってきています。

(昔の会議を知ってる人って、会議の最初に、資料を配布するってありましたよね?w 人数の多い会議の前は、数百枚もコピーして、ホッチキスで止めて・・・w そーいや、ホッチキスの針の消費量、減ってるのでしょうね。知らんけどw)

ミレニアム世代(30代)からは、上下の世代間ギャップが大きいのですが、ここをどう変えていくのか、いや、強制的に変えていくしかない状況に入ってきています。

脱ハンコということで、日本政府もようやく重い腰を上げて、デジタル化を推し進めています。

これを今やらなければ、若い世代とのギャップがますます大きくなり、税金の使い道や、税金を徴収することへの反発が強くなるでしょう。

この書籍の中で、面白いと思ったのは、仮想空間シフトによって、場所には関係なく情報のやりとり、交流ができるようになるのですが、物流に関しては逆に軽減するのではないかと分析しています。

つまり、東京一極集中だったのが、人が地方へ分散化され、その結果、地産地消が進んでいくということらしいです。

アマゾンのような倉庫業を主軸にするオンラインショップやオンラインモールとは違って、物流を伴うものは、地産地消ということに。

ん-、でも、これって、生鮮食品など限られたものでしょうね。

工業生産品は、どうしても大量生産した方が安価にできるので、これを地産地消にするのは難しい。

例えば、誰もが使う必需品と言ってもいいようになったスマホなんて地産地消では、製造することすら不可能です。

また、シェア・エコノミーなども広がってきたことで、さまざまなことが、変化しているのですが、まだまだ一部。

また、所有したものを、『貸す』というのが、広まってくるでしょう。

すでに、不動産だけでなく、車や駐車場を、自分が使わないときは、誰かに貸すといった動きも出てきています。

仮想空間シフトは、そういった生活に対する考え方、価値観までも変化が起きてきているのです。

本書の最後の方にある『第五章 これからの世界を生き抜く10のアクション』に書かれている内容は、具体的で面白かったです。

1.境界性領域を作る

テレワークになると、家にいながら、会社の人と打ち合わせたり、得意先の人と話をするということになります。場所の移動がなく、1分後には、違う立場(上司と部下から、お客さんと営業マンなど)に変化することに。

家族と一緒だと、学校から子供が帰ってくるなど、家族とのやりとりも、仕事の合間に入ってきます。

この『切替』が、瞬時に行う必要があるので、疲れてしまうことになりかねません。

自分のキャラクター、自分の立場を意識して、俳優が、いろいろな役をこなすように切り替える必要が出てくるのです。

2.ナメすぎず、ビビりすぎない

仮想空間シフトが起きてくると、『偶然、誰かに出会う』というのが非常に少なくなります。

新幹線で隣り合わせになった人との出会いとか、行きつけの飲み屋での出会いなど、起きません。

『巣ごもり』になってしまうと、意識して出会いを作らないと、どんどん人間関係が狭くなっていきます。

そのときに、必要なのが、ナメすぎず、ビビりすぎないという態度。

いきなり慣れ慣れしいことや、押しつけがましいのは、嫌われますし、かといって、何もアクションしないというのも、その後、連絡しにくくなってしまいます。

フラットな仮想空間ならではの関係性を体得する必要があります。

3.アジェンダを設定する

リモート会議は、物理的な会議室を必要としないので、終わりの時間などをきっちり決めておかないと、ダラダラと長くなる傾向があります。

また、何を話し合うのかアジェンダを決めておかないと、集まってから、何を話し合おうなどやっていたら、ダラダラ時間がもっと増えてしまいます。

ちょっと顔を出して抜けるとかもやりにくいので、アジェンダを設定し、そこに参加する必要があるのかどうかを判別するにも、アジェンダは必要です。

特に、定例会など、毎週やることが目的になってるような会議は、何をするための会議なのかを明確にしておかないと、ダラダラと時間を消費していくことになります。

4.仕事に意味合いを作る

言い方を変えると、『指示待ちにならない』ということですね。

仕事に対して、何を目指しているのか、どんな変化を作り出そうとしているのかを意識しておかないと、だんだん、ダラダラ仕事になってしまいます。

オフィスでは、同僚や上司の目があるので、そこまでひどいことにはならないですが、テレワークになると、甘えが出てしまって、ダラダラする時間が多くなり、結果が出ないということに。

そうなると、どんな仕事であっても、長続きしなくなります。

5.共感できる人と組む

先の内容とも似ているのですが、プロジェクトなどの仕事では、共感できるかどうかというのは大きな差になります。

これまでのオフィスでの仕事でもそうですが、共感できる人と一緒に仕事ができれば、楽しくできるのは間違いないですよね。

価値観が違って、共感できない人と仕事をするのは、疲れます。

オフィスなら、その状況を上司や周囲の人たちが察して、いろいろと気を使ってくれたり、時には、『ガス抜き』の飲み会などもあったでしょう。

テレワークが主軸なると、そういうのは、なかなか上司であっても感じ取るのが難しくなっています。

6.ライスワークとライフワーク、リスクとリターンのバランスをとる

生活のための稼ぐことがメインであるライスワークと、価値観ややりがいを感じているライフワークのバランスが重要になってきます。

どちらかに偏りすぎると、疲弊してしまったり、生活に困窮することになりかねません。

会社勤めでは、なかなか難しいかと思いますが、こいうことを意識していかないと、今後の社会の変化についていけないことになります。

7.問題提起に敏感になる

いわゆる『問題意識を持つ』ということですが、テレワーク以前から、デジタル化されていく社会の中では、非常に重要なポイントです。

インターネットが広まって、膨大なデータがオンラインに存在します。

個人の日記から、専門家の論文、解説など、レベルも種類も書かれている言語もさまざまあります。

『百科事典』がなくなり、そのうち辞書もなくなっていくでしょう。

しかし、それゆえに必要なのは、『どんなキーワードを入れるか?』であって、疑問を持つこと、問題点を見出すことが、膨大なデータを活用できるかどうかの別れ目になってしまいます。

8.問題にきちんと向き合う

これも、テレワークだからではなく、時代の中で、重要になってきてるポイントです。

妙なところに『忖度』しないで、ストレートな問題点、できない理由を探すのではなく、そのできない理由をどうやれば、乗り越えられるのか?を探すということですね。

9.階段のステップを小さくする

これもテレワークがどうこうではなく、現実的に、どうやって実現するのかを考えていれば、出てくる話です。

壮大なプロジェクト、目標を設定するのはいいのですが、そこへの道のりを具体的に考えられるかどうか?

千里の道も一歩からではないですが、今日、今週、今月は、どこまでやるのか、最初の一歩の小さなステップを作っておかないと、何をしていいのか分からなくなります。

テレワークだからこそ、こういう段階を共有できるようにしておかないと、『指示待ち』の人たちが増えていってしまいます。

10.変化を前向きに受け入れよう

今回のコロナ禍による強制的な変化があったように、これからも、さまざまな変化が、急速に起きることが考えられます。

そういう変化に対して、アクティブに取り組むのか、嫌々、取り組むのかによって、大きな差が出てきます。

環境は変化するものという気持ちで、取り組むことが大切です。

このような10個のアクションが書かれていたのですが、面白いことに、仮想空間ネイティブなZ世代以下になると、これらのことが、当たり前にできたりします。

例えば、オンライン・ゲームで、数人で組んで行動すると、Z世代は、瞬時に、それぞれのメンバ―の特性を理解し、リーダーになったり、支援部隊になったり、分業がなんとなくできてしまいます。

オジサン・オバサン世代になると、リーダーを誰にするのか、担当をどうするのかを決めかねているうちに、ゲーム・オーバーになりかねませんw

『ゲームばっかりして・・・』と眉をひそめるだけでなく、彼らは、ゲームの中での社会性や分業を学んでいることを知っておいた方がいいでしょう。

彼らが社会人のメインになってきたとき、仮想空間シフトから、さらに先のVRやARへ変化し、もう、バーチャルだのリアルだの言うことすらなくなってると思います。

さて、あなたは、ついていく覚悟、ありますか?w